新しい畳に泥のようなものがついているのはなぜ?畳表の泥染めとは【畳職人が解説】

お役立ち情報

新しい畳に泥のようなものがついているけど、大丈夫?」
「畳を替えたら、ほうきをかけると灰色のほこりが出てきた…」

新しい畳に替えた直後、このような疑問や驚きを感じる方がいらっしゃいます。実はこれ、欠陥でも汚れでもありません。「泥染め」という伝統的な加工技術によるもので、品質の良い証でもあります。

今回は、新しい畳につく「泥のようなもの」の正体と、泥染めの製造工程を畳職人の目線でご紹介します。

新しい畳に泥のようなものがついているのはなぜ?

新しい畳の表面についている灰色の泥のようなものは、染土(そめつち)と呼ばれる天然の泥です。い草を刈り取った後、乾燥させる前に染土を水に溶いた液に浸す「泥染め」という作業を行います。そのときにい草の表皮に付着した染土が、新しい畳を使い始めた際に泥埃(どろぼこり)のように見えるのです。

📌 新しい畳を使い始めるときのお手入れ

新しい畳表には泥染め加工が施されております。岸田たたみ店では納品前に畳の拭き上げサービスを行っておりますが、ご使用後も多少泥が付くことがあります。気になるようであれば、再度掃除機をかけてください。ただし、お手入れの際は下記の点にご注意ください。

⚠️ 濡れた布巾で強く拭くのはNG
拭いた跡が残ったり、変色したりすることがあります。お手入れの際は乾いた布や掃除機をお使いください。

「汚れているのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、この染土こそがい草の品質を守る大切な役割を果たしています。使い続けるうちに自然と落ち着いてきますのでご安心ください。

泥染めとは何か

泥染めとは、刈り取ったい草を染土(そめつち)と呼ばれる特殊な泥に浸す加工技術のことです。い草の産地で古くから受け継がれてきた伝統的な工程で、天然い草の品質を高めるために欠かせない作業です。

💡 「泥染め」は着色ではありません
名前に「染め」という言葉が入っていますが、い草を色付けするための加工ではありません。染土に含まれる天然成分がい草の繊維に作用することで、品質・耐久性・艶を高めるための工程です。染料や化学薬品は一切使用していません。

🌿 泥染めの主な効果

  • い草を早く均質に乾燥させることができる
  • い草の色素(葉緑素)・粘り・弾力性・艶を保つことができる
  • 畳表としての耐久性が高まる
  • 使用中の色・艶が長持ちする

泥染めをしない「無染土」のい草と比べると、粘り・弾力性・艶に格段の差が出ます。見た目だけでなく、踏み心地や長持ちするかどうかにも影響する、畳表の品質を左右する重要な工程です。化学薬品を使わない、自然の力を活かした昔ながらの知恵です。

泥染めの製造工程

泥染めはおおまかに6つの工程で行われます。産地で実際に見せていただいた様子をもとにご紹介します。

1
い草の刈り取り
梅雨の時期に収穫を迎えたい草を刈り取ります。長さや太さが均一になるよう、熟練の農家さんが丁寧に選別しながら刈り取ります。刈り取り直後のい草は青々とした美しい緑色をしています。
2
泥(染土)に浸ける
刈り取ったい草を染土の入ったプールに浸けます。染土は熊本の特定の地域で採れる天然の泥で、鉄分やタンニンなどの成分が豊富に含まれています。い草全体に泥がしっかり浸透するよう、均一に浸けるのがポイントです。
3
泥から引き上げる
泥に浸けたい草を引き上げます。全体に泥がついたい草は、この時点では重く、独特の色合いをしています。引き上げたあとは次の乾燥工程へと移ります。
4
低温乾燥・泥払い
泥をつけたい草を低温でゆっくりと乾燥させます。高温で急乾燥させるとい草が傷んでしまうため、低温でじっくり乾かすことが品質を守るうえで重要です。乾燥後は余分な泥を丁寧に払い落とします。この作業も熟練の手仕事が求められます。
5
泥染めしたい草の選別
乾燥・泥払いを終えたい草を、長さ・太さ・品質ごとに丁寧に選別します。均一ない草を揃えることが、最終的な畳表の品質に直結します。この選別作業の丁寧さが、仕上がりの美しさを大きく左右します。
6
い草織り(畳表に仕上げる)
選別されたい草を専用の織機で織り上げ、畳表に仕上げます。経糸(たていと)にい草を絡ませながら、均一に美しく織っていきます。この工程を経てはじめて、私たちが目にする畳表が完成します。

泥染めと無染土の違い

畳表には泥染めのものと、泥を使わない「無染土(むせんど)」のものがあります。

泥染め 無染土
色艶 落ち着いた深みのある緑 鮮やかな明るい緑
手触り 伝統的な畳のさらさらとした感触 本来の草のツルツルとした感触
香り 芳醇な畳の香り 本来の草のフレッシュな香り
アレルギー対策 やや低め ホコリが吸着しにくくカビが発生しにくい

泥染めは工程が多い分、品質が安定しており長持ちします。一方、無染土はい草本来の鮮やかな色と強い香りを楽しみたい方に向いています。どちらが合っているかは、お部屋の用途や好みによって異なります。

産地に足を運んで感じたこと

実際に産地でこの工程を目の当たりにして、改めて感じたことがあります。泥染めは機械化されている部分もありますが、泥払いや選別など、要所要所に熟練の手仕事が欠かせません。

一枚の畳表が完成するまでに、農家さんの丁寧な栽培、熟練の泥染め職人の技術、そして選別・織りの工程——多くの人の手と時間がかかっています。

畳を届けるとき、この背景をお客様にも知っていただきたいと思っています。

まとめ

  • 泥染めは天然の染土を使ったい草の伝統的な加工技術
  • 耐久性・防虫・色艶などい草の品質を総合的に高める効果がある
  • 刈り取りから織りまで6つの工程を経て畳表が完成する
  • 一枚の畳表には農家・職人の手仕事が積み重なっている

「どんな畳表が自分に合っているか相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。実際のサンプルをお見せしながら、お部屋やご用途に合った畳表をご提案します。

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